おはようございます。
少し前ですが、ミュージカル俳優やダンサー、声優を育成する学校で「海外ミュージカルを知ろう!」というワークショップをしました。
生徒たちに「自分がミュージカルプロデューサーだと想像して、今の日本の社会にとって一番有意義なミュージカルを上演するとしたら、どのミュージカルにしますか?」と聞いて、結構深い答えが出ました。
それは「外見に基づいている偏見についてのミュージカルを日本でやりたい」という声です。
例えば、オペラ座の怪人には、怪人は見た目のせいで偏見を受けていますが、実際に心が寂しいです。
同じように外見のせいで偏見を受けて、心が寂しい人が日本に結構います。
皆様、自分の外見で偏見を受けていると感じたことはありますか?
周りにどのように思われていますか?どんな人に似ていると言われていますか?
僕はたまに、クリス・エバンス(キャプテンアメリカの俳優)と似ていると言われています。
クリス・エバンスがとてもかっこいい俳優ですから、とても光栄なことですが個人的に似ていないと思います。
でも人種と国籍が同じですね(白人のアメリカ人)。「似ている」と言われている理由はそちらかな?
周囲のひとたちは、外見から「この人種だ」「この国籍だろう」と思われることが多いのだと感じます。
もし他者から同じ人種、同じ国籍だと思われるなら、自分の人種と国籍をみられているのだと気づくきっかけがあまりないとおもいます。
でも、周囲にいるひとたちと見た目が違う人だと、気付かせられるきっかけがあります。
残念なことに、それが偏見また差別に繋がる場合もあります。
このことを描いた、一つのミュージカルを高校生に紹介して、興味を持ってくれました。
そのミュージカルは「アリージャンス~忠誠~」です。
「アリージャンス」はアメリカのミュージカルですが、ほとんどのキャラクターは日系人です。
作った人もタケイさんという日系アメリカ人です。
タケイさんの祖先は日本人であっても、彼のミュージカルはあまり知られていないかとおもい紹介しました。
内容は歴史に基づいています。
タケイさんは、子供の頃アメリカ政府に牢獄みたいなところに閉じ込められました。
彼は何も悪いことをしていないのですが、犯罪者として扱われた理由は「日系人」だから。
その頃アメリカは日本と戦争をしていて、日系アメリカ人の国籍がアメリカであっても、人種が日本人なので、アメリカを裏切ると疑われ閉じ込められました。
しかし、同時にアメリカはドイツと戦争をしたのにもかかわらず、ドイツ系アメリカ人を幽閉しませんでした。
そして現在になって、その時代のアメリカ人の発信に基づき、日系人を拘束する法律が差別に過ぎなかったと認められました。
「外見で判断され、差別を受けた」という歴史をミュージカルにした俳優・芸能人のタケイさんによると、
ミュージカルは歴史の勉強だけではなくて、現在の難民の状況にも関係あると伝えています。
例えば、シリアなど中東エリアの難民が多くの国に受けいれられないことに関して、
「外見がテロリストに似ているからといって、皆がテロリストの可能性があるというのは間違えた見方です。
戦争しているからといって日系人が全員敵というものも間違いです。歴史を知らなかったら、全く同じことが起こるでしょう」とタケイさんはおっしゃっていました。
つまり、”偏見”の歴史がミュージカルの内容になって、そのミュージカルは現在の偏見と戦う作品にもなっています。
「アリージャンス」のミュージカル、アメリカの日系人の歴史、とタケイさんの意見についてもっと聞きたい方、
ぜひ、以下の(日本語の)動画をご確認ください。
最後にもう一つ。偏見についてのコンテンツを共有させていただきます。
こちらはSHALAという日本人と白人のハーフの方が作った曲です。彼女が常に何回も経験したのは以下の状況です。
「どこから来たの?」と周りに聞かれて、「名古屋から来た」と正直に答えましたが、「そうじゃなくて、本当にどこから来たの」みたいにもう一回聞かれています。
それを基づいて、「Where do you come from?」という曲を作ったそうです。ノリが結構いいから、ぜひ聞いてみてください。
この曲で「違う人」としていつも見られている方の経験を認めて、「エイリアン、宇宙人、手をあげろ」などの歌詞で「違う人」としてみられることを祝っています。
見た目で判断されることが全部悪いというわけではないです。
クリス・エバンスと言われている僕は、特に傷つけられていないです。
しかし、外見で得られたイメージだけ信じ込んで、その人の個性や発言を無視する場合、偏見になることが多いと思います。
もし僕が「グレゴリー」ではなくて、同じ白人である「クリス・エバンス」という名前で常に呼ばれたら、たとえクリス・エバンスがイケメンでも、僕は怒ってしまうかもしれない。
偏見の話をすると悲しくなったり、怒ったりして、傷つけあったりしやすいですので、このようにコンテンツや何らかの芸術を使うのが結構いいやり方だと思います。
偏見がある世界に住んでいる私たち、タケイさんやSHALAさんのように多様性をつたえる作品を作ってみませんか?
劇団代表
グレゴリー・ウルフ