この春、小学生メンバーが対象の「Member Showcase 2022 ~Spring~」と中学生メンバーが対象の「The PROM」が実施されました。その両方のプロジェクトマネージャーを務める北田莉菜さんに、メンバーたちが迎えるそれぞれの"卒業"について聞いてみました。
まず、かんたんなプロフィールを教えてください。
こんにちは、北田 莉菜です。わたしは元YTJメンバーで、18歳から22歳のあいだ、所属していました。元々バレエを習っていて、高校時代は創作ダンスのリーダーをしたこともあったんです。引っ込み思案だった自分をもっと変えたい!と思っていたときに、ちょうど自宅のポストにYTJのチラシが入っているのを見て、応募してみました。
YTJに入って活動することで、自分に自信がつくようになり、見える世界・景色は大きく変化しました。自分に自信が持てるようになると、他者にもやさしくなれるのだなと感じたんです。わたしにとっては、YTJで経験したことはとても大きかったので、恩返しをしたいと思い、メンバーからスタッフになりました。
現在は「Member Showcase」、「The PROM」のプロジェクトマネージャーをしながら、スタジオで子どもたちにダンス、歌、英語を指導しています。
「Member Showcase」とはどんなものでしょうか。
「Member Showcase」は、小学生のYTJメンバーを対象に開催されるスタジオショーイングのことです。舞台でのパフォーマンスを想定した公演ですが、スタジオで開催されます。
きらびやかな舞台衣装といったものではなく、着慣れたYTJの公式Tシャツなどを着用して、レッスンで学んだ英語スピーチ、歌、ダンスをお客さまに披露します。
複数のスタジオと合同で行うこともあり、日頃顔を合わすことのない仲間と出会えるので、YTJメンバーにとっては大きなイベントです。
「Member Showcase」は発表会に近いイベントのようですが、あえて「発表会」ではなく、「Member Showcase」という名前にしているのには、なにか理由があるのでしょうか。あれば教えてください。
YTJは習い事教室ではなく、ミュージカル劇団です。公演やイベントは、お客さまあってのことだと考えています。 「Member Showcase」では、お客さまが来てくださり、メンバーの保護者が中心となるのですが、観覧費をいただいています。
単なる発表会であれば、そのときにできることを披露すればよいだけのことですが、劇団であるYTJでは、メンバーにお客さまを意識してもらいたい、自分が舞台人であることを意識してもらいたいと考えています。
特別な衣装を着用しない、特殊な照明もない…、そんななかでパフォーマンスすることを意識してほしいことから、発表会という言葉を使わず、「Member Showcase」としています。
「Member Showcase」の指導方針があれば、教えてください。
自主性を重んじることです。学年は小学1、2年生ですが、YTJに所属しているからには、舞台人として扱っていきます。
なんでも指示を出してあげれば、子どもたちは動きやすいかもしれません。しかし、これでは自分で動ける子には成長できません。わたしたちYTJスタッフは、指示を出しすぎず、なるべく見守り、子どもたちが率先して動けるようにフォローしています。
また、メンバー全員で良い作品、1つのものを作れるように、ということも心がけています。
「Member Showcase」前の子どもたちの様子はどんな感じですか?緊張していますか?
メンバーによって反応は異なりますが、ワクワクしている子が多い印象です。「Member Showcase」前になると、クラスの雰囲気も仕上がり、絆がしっかりしてくることも多いです。
日頃からYTJでは、あいさつをしっかりとするように指導していますが、この時期になると、かんたんな返事であっても、しっかりと腹筋を使って声を出すメンバーも出てきます。
他にも、振り付けを覚えようとしたり、まわりをよく見るようになったりするメンバーも出てきます。ちょっとモジモジしているメンバーがいたら、手を引っ張って助けようとするほどです。
おそらく「Member Showcase」を成功させるために、自分はどうしたらいいのかと考えて行動しているのだと感じます。自分のことだけでなく、視野を広げ、周囲の様子を見て、フォローするメンバーも出てきています。みんな、とても一生懸命です。
「Member Showcase」の時期は、選抜メンバーを打診する時期でもあります。選抜メンバーは、YTJのレッスンや舞台などに積極的に参加している魅力的な一部のメンバーのことを指し、わたしたちスタッフが選定してメンバーと保護者に打診をしています。
選抜メンバーになると、レッスンの曜日が変わるため、基礎クラスに所属しているメンバーとは別のクラスになるんです。なので、ある日突然お友だちを見かけなくなると、「あの子選抜メンバーに呼ばれたのかな…」とメンバーがソワソワするのです。
YTJメンバーたちはみんな選抜メンバーに憧れていて、選ばれたい子がほとんど。選ばれるために、意識して行動するようになります。
選抜メンバーは、単にダンススキル、歌唱力、英語力があるだけでは選ばれません。レッスン中の態度など内面も重視しています。具体的にいくつか挙げると、忘れ物をしていないか、レッスン中の態度はいいか、きちんとあいさつができるか、返事ができるか、自分から行動できているか、行動は早いか、などです。
舞台は、ひとりで作るものではなく、みんなで作り上げるもの。どんなにスキルがよくても、態度がよくなければ、よい舞台は作れないでしょう。見ているお客さまに伝わってしまうこともあります…。そのため、YTJではメンバーの自主性など、内面も見るようにしています。
このことを理解しているメンバーも多いので、「Member Showcase」の時期は、行動力がとてもよくなります。選抜メンバーに選ばれるためにはどうしたらいいか、自分たちで考え、ふさわしい行動をするようになるんです。
「Member Showcase」を通じて、子どもたちのどんな成長を感じますか?
「Member Showcase」を通じて、ダンス、英語、歌などスキル面も向上しますが、内面など人間性も大きく成長してきています。
特に行動力は大きく変わったと感じます。持ち物を自分で用意するようになるなど、生活面や態度の変化もあるほどです。
さらに、積極性が身についてきていると感じます。行動が早くなり、指示が出る前に動ける子も増えてきました。
自ら考えて、行動をすることは、YTJでの活動だけでなく、学校生活においても重要です。これは社会に出ても同じことが言えるので、子どものうちから社会性を身につけてほしいと思っています。内面の成長だけでなく、もちろんダンス、歌、英語のスキル面の向上も大いに感じられます。
「Member Showcase」では、日頃のレッスンでは会わないメンバーと顔を合わせることになるので、上手だったり、魅力的だったたりするメンバーがいると、自然と目がいき、「あの子のここがいいな」と思って観察しているのか、そのメンバーの良い分を取り入れるようになっています。これはメンバーたちも無意識かもしれません。
スタッフとして、メンバーたちを見てきて、日頃のレッスンと動きや表情が全然違ってくる子もいます。「この子、こんな顔するんだ!」とびっくりすることも。
子どもはとても無垢で、感化されやすい存在です。「Member Showcase」などで出会った、上手なメンバーのパフォーマンスを見て、どんどんよいところを取り入れて成長してほしいです。
「Member Showcase」でメンバーが壁にぶち当たること、困難に立ち向かうことはありますか?あれば、どんな困難があるのか教えてください。
はい、あります。本番では予想外のことが起こり得ます。リハーサルは順調でも本番がうまくいかないこともあるでしょう。このような舞台ならではの困難は、慌ててしまうこともあります。しかし、まったく同じ舞台、その本番の瞬間は二度とありません。うまく乗り越えて一度きりの本番を楽しんでほしいなと思います。
具体的な事例を挙げると、本番に急遽出演できなくなるメンバーもいます。体調不良や怪我、家庭の都合など理由はさまざまですが、これはしかたがないことです。代役が立てたり、セリフや振り付けの調整をしたりして対応することもあります。急遽、予定していた内容が変わること、突然の対応があることを、ネガティブに捉えずに、これも舞台の醍醐味だと、楽しんでほしいなと感じています。
本番直前以外にもぶつかる壁はあります。たとえば、ソロに選ばれなくてショックを受けるメンバーもいます。YTJのメンバーたちは、ダンスや歌、英語が大好きで、ソロパートをやりたい子がたくさんいます。しかし、自分が希望していたパートができないことも。ソロを選ぶ基準はたくさんありますが、こちらもスキルだけではなく、内面も考慮しています。必要に応じて、選ばれなかった子へのフォローもおこないます。
しかし、残念なことですが、それがきっかけで辞めてしまうメンバーがいることも事実です。もちろんスタッフとしてフォローはしますが、基本的にはどんなことでも自分で噛みしめてほしいと考えています。
なぜ自分は選ばれなかったのか、選ばれたメンバーを参考にしながらも、見つめ直すいい機会ととらえてほしいです。他人を認め、努力ができるようになってもらえたらと思いながら指導しています。
今回の「Member Showcase」のテーマはなんですか?
「Everlasting~たとえ離れても、切れない絆~」です。離れてしまっても、お互い夢に向かって進んでいるということをテーマにしています。
小学2年生メンバーからすると、Cクラス(小学1、2年生を対象にしたクラス)を卒業することになります。小学2年生にとって、1学年下の小学1年生メンバーとは一旦お別れになるので、卒業をテーマにしたショーケースとなっています。
仲良しになったメンバーと離れることは寂しさもありますが、お別れではありません。YTJにいれば今後舞台や公演で再会することもあるはずです。
YTJでおなじみの曲も扱うので、これまでの思い出を振り返りながら小学2年生メンバーには成長を感じてくれたらなと。小学1年生メンバーにも、1学年先輩のメンバーとの思い出を振り返ってほしいです。
ちなみに「Member Showcase」のテーマは、ほぼ毎回変わります。あらゆるテーマでパフォーマンスしてほしいという考えや、見てくださるお客さまを飽きさせないように、という意味を込めています。
「Member Showcase 2022 Spring」 のテーマは「The PROM」と関連づけられていると聞きましたが、どんな共通点があるのですか?
「The PROM」と「Member Showcase」の共通テーマは、「卒業」です。
「The PROM」とは、中学2、3年生のメンバーを対象にした舞台です。現在YTJでは、高校生になると「YTJプロ」として扱うことになり、中学3年生メンバーは、一旦卒業することになります。
もちろん、卒業後に「YTJプロ」のメンバーとして活動することも可能です。近年ではYTJプロに進むことを希望する子も増えてきて、今ではだいたい5割くらいのYTJメンバーがYTJプロになっています。
…とは言え、中学3年生は大きな節目です。高校受験を前に、退会するメンバーが出てくる時期。今まで一緒に活動してきたメンバーと、大切な思い出を作ってほしい、節目となるようなイベントを楽しんでほしいという想いから、「The PROM」という舞台が誕生しました。
「The PROM」は休会していたメンバーも参加できます。受験で中学3年生の夏からお休みしていたけれど、最後に「The PROM」には参加するメンバーもいるんですよ。
「The PROM」は、レビューショー形式で、過去の演目をメドレーで披露します。「この曲好きだったなぁ」、「あのときの舞台ではここを頑張ったな」など、当時の衣装を着て、今までを自然に振り返ることができるようにしています。
卒業証書授与や、サプライズも用意しています。ドレスアップする場もあるので、「The PROM」前のメンバーは、緊張よりもワクワクしていることが多いです。
卒業というテーマだけでなく感謝や激励という意味合いも込められています。メンバーたちが保護者にこれまでの感謝の気持ちを伝えられる舞台にもなっているんです。実際に、保護者の感謝の気持ちを口にするメンバーは多くいます。これまでの活動を振り返り、感謝をすると同時に、これからいろいろなことに挑戦していってほしいです。
「The PROM」の指導方針があれば教えてください。
公平性を意識しています。中学2、3年生のメンバーは3つのクラスに分かれていて、基礎クラス、選抜クラス、特別選抜クラスがあるのですが、この3つのクラスのメンバーを公平に接することを心がけています。
たとえばダンス。基礎クラスメンバーと特別選抜クラスメンバーでは、振り付けを覚える早さが違うこともあります。しかし、ここで「特別選抜クラスならすぐに覚えられるだろう」と手をかけないのではなく、基礎クラスも特別選抜クラスも同じ時間を割くようにしています。これは、指導内容がまったく同じという意味ではありません。どんなメンバーにも、平等に時間を割くという意味です。
「The PROM」でメンバーたちはどう成長していると感じますか?
先述したように、個人差はありますが、感謝の気持ちを自然と口にするようになってきます。「The PROM」では、事前にメンバーのメッセージ動画を撮影して、本番で流す演出があるのですが、ここで日頃の感謝の気持ちを言うメンバーが数多くいます。
なかなか照れくさくて、「ありがとう」と家族に言えない子でも、この動画で口にすることもあります。YTJスタッフに最後にお礼を言ってくれることもたくさんあるんです。指導してきたスタッフとしては涙してしまいますね。
このように「感謝を伝える」いうことは、「The PROM」以外でも活かすことができます。高校生、おとなになっても、誰かによくしてもらったら感謝の言葉を伝える、ということは非常に大切です。
YTJを卒業しても、身につけたことを活かしてほしいと思っています。
1時間以上に渡り、「Member Showcase」と「The PROM」についてお話をしてくださいました。終始、楽しそうにスタッフとして話してくれ、仕事としてのやりがいを感じているのが伝わってきます。リハーサルを終えたスタジオで取材を受けていただきましたが、子どもたちからたくさん話しかけられている様子も。ニコニコとした笑顔で、メンバーに対応している姿が印象的です。北田莉菜さん、お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。