アメリカで大学に通っていたとき「I hate group projects」(直訳:「グループでするプロジェクト活動が嫌い」)という言葉をよく聞きました。
大学でなくても社会人になってから、以下のような経験をされた方はいますか?
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4人のグループに発表の課題を与えられたが、役割分担がうまくいかない。
結局1人が「他の3人が遊んでいる間、私が犠牲になってる。4人の分を全部1人でやってるのに、皆が同じ成績をもらうなんて、不公平!」と辛い気持ちを感じながら、夜中の2時まで作業する。
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僕自身も似たような経験をしたことがあります。
大学であれば日本よりアメリカのほうがこの状況になることが多いかもしれません。学校でも職場でも、誰かと一緒にプロジェクトを進行する際、上手くいかないこともありますよね。
ただ周囲から「I hate group projects」と聞いたとき、納得できなかったことがあります。
なぜなら僕は「Life is a group project」だと考えているからです。社会というのが、グループで行う大きなプロジェクトのひとつのように感じてならないのです。
人生に、そもそも1人だけで出来ることがあるでしょうか。
食事するために、1人で畑を耕し、収穫したりして料理しますか?
家で暮らすために、1人でマンションを建てましたか?
服を着るために、1人で布を切って縫いましたか?
勉強をするために、1人で読み書きを学びましたか?
プロジェクトベースで進めていく教育は知識や技能などのスキルで構成する学校の教育方法とは異なりますが、他者と一緒に作る社会に住んでいるのなら、プロジェクトを成功させる経験は価値のあることだと僕は信じています。
まず学校の受験や試験で用いられている多くは、プロジェクトではなくスキルで判断されます。ここでは、学生が問題に対して正しく解答するスキルがあるかどうかを重要視され、正しく解答出来るかどうかが評価される点です。学生も教師もスキルを鍛えることを目指し、教材を用意し、授業を行います。
この方法でも、きっと多くのことを学べますが、生徒の成長や考え方にどのような影響があるでしょうか。
学生たちは自分が出来ること、出来ないことを何よりも気にすることになります。「出来る」と言われている人が「出来ない」と言われている人より褒められることになるでしょう。それによって「私は出来るから、権利がある」や「私は出来ないから、もうダメ」と思い、アイデンティティーが形成される場合もあります。
また、個人が評価されるため、多様性やチームワークの価値を認められない傾向も考えられます。
YTJでは、プロジェクトで活動を行います。
プロジェクト内で1人ですることもありますが、プロジェクトの多くは所属するクラス、もしくは他のクラスのメンバーと一緒に行うものです。YTJでもダンスや歌、ダンス、英語などのスキルを学びますが、それだけではなくプロジェクトベースが中心になって進行していきます。YTJメンバーが公演、ショーケースなどのコンテンツ発表を目標にし、プロジェクトメンバーの一員としてレッスンで取り組みます。
スキルアップすることだけではなく、プロジェクトによって成果を出すことを大切にしています。つまり、1人だけで出来ることよりも自分の強みとお互いの強みを合わせて何が出来るかを意識すること。
プロジェクトで進めていく教育のなかには、社会で生きていくために必要な能力も身につけることが出来ます。決してスキルを教えないわけではなく、コンテンツの発表(成果)を目指しながら、自然とスキルが身についていく教育です。
YTJがミュージカルを上演するとき、出演するメンバーには大きい役割が与えられます。セリフ、ハーモニー、立ち位置、振り付けを覚える難しいチャレンジです。毎年全国で上演していると、何らかの壁が立ちはだかります。自分もしくは他のチームメンバーが、セリフを覚えようとしても難しい、体調不良でリハーサルを休まないといけない。高い音程を歌えない、立ち位置が分からなくなるなど。
この壁に直面した時、どうしますか?
もしかすると、この時に「I hate group projects」と言って、逃げ出したくなるかもしれません。
でも、この経験からしか、得られない大事な学びがあります。
YTJでは、お客様に良いパフォーマンスを提供することが一番の目的です。
その目的までの道のりは、決して1人でたどり着くことはできません。きっと隣でどんな時でも支え、励ましてくれるメンバー、保護者の方々、スタッフがいます。その仲間たちと一緒に解決方法を探してみると、プロジェクトにとっていい答えが見つかるでしょう。
皆と一緒に、プロジェクトチームの一員となって、より多くの人を喜ばせる経験をしてみませんか?
劇団代表
グレゴリー・ウルフ
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インタビュー①
インタビュー②
「英語と多様性を楽しみながら学ぶ!“違い”を受け入れて世界を広げよう」
コラム①
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